今やドローンは農業、林業、建設などあらゆる面に活用されてきています。
ドローン市場は今後2025年には7090億円の市場規模に及ぶとされ、ますます注目を浴びる分野といえます。
これから参入するには決して遅くないニーズや可能性を持ったものです。
それで是非ドローンを自社に取り入れたいと希望する事業所も多くなってきました。
ですが、産業用ドローンの活用はコスト面で負担になってくる一方、国はドローンの活用を推進するため様々な補助金助成金を用意してくれています。
それらを活用するためにここでは6つの補助金助成金について具体的に解説したいと思います。
産業用ドローンの導入が検討される理由
ドローンの利便性の良さから、今や様々な業種で導入が検討されるようになってきました。
たとえば農業では農薬散布に人手で時間をかけて行っていたのが、10aでわずか1分で散布できたりと、高齢化を迎え体力のなくなった農業従事者の助けになっています。
また高所など危険が伴う場面ではドローンの活躍ぶりは目ざましいものがあります。
たとえばダムの点検や高い建物の測量などで幅広く用いられるようになっています。
また国土交通省が土木・建設分野においてドローン活用を推進していることも普及に拍車がかかっています。
しかし産業用ドローンは価格が高く性能にもよりますが、50万~300万円と高額です。
一般向けのトイドローンは5000円くらいですので、産業用ドローンがいかに高いかわかりますね。
また購入時には保険に入ることも必須となりますので、コスト面でも荷が重くなっています。
ですがそんな産業用ドローンを導入するにあたり、様々な補助金・助成金が用意されており、購入資金を助けてくれるものがあります。
以下に補助金・助成金にはどのようなものがあるかを説明したいと思います。
産業用ドローン導入時に活用できる6つの補助金・助成金
1.ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金) 2.働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース) 3.事業再構築補助金 4.IT導入補助金 5.強い農業づくり総合支援交付金(農業支援サービス事業支援タイプ) 6.小規模事業者持続化補助金 |
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
意図 企業の新製品の開発や業務プロセスの改善などを補助するために設定された補助金です。
対象 中小企業、個人事業主、小規模事業者
新しいサービスや商品開発、生産性向上に取り組む目的であるならば、どの業種でも活用可能です。
(すでにあるものをリニューアルや改善の目的では申請できません。新規事業であることが必須です)
また募集期間の制限はなく通年を通してあり、申請するチャンスがいつでもあるといえます。
補助率 1/2~2/3
補助金の上限額は申請する「枠」の種類で異なるため、事業者に応じて条件に合うものを選んでください。
従業員数 補助上限額 従業員数5人以下 100万円〜750万円 従業員数6人〜20人 100万円〜1,000万円 従業員数21人以上 100万円〜1,250万円 <補助率2/3となる小規模事業者>
<引用元:補助金プラス>
製造業・宿泊業・娯楽業 従業員数20人以下 卸売業・小売業・サービス業 従業員数5人以下
ものづくり補助金の対象として申請が通れば、ドローンの導入費に2000万円かかるとしても、1250万円を補助してもらえる可能性があるので活用したいものです。
しかし、ものづくり補助金は申請すれば誰でも受給されるわけではありません。
審査は厳しく申請がとおる採択率は3~4割ほどですから、あらかじめ十分な事前準備が必要になりますね。
【事前準備】 ・公募要項や申請条件の枠など、会社に合致しているか確認し、明確な事業イメージを膨らませる。 ・審査員に事業計画内容がしっかり伝わるように、図、画像、具体的な数字を使って説得力をもたせ、誰でも分かるように専門用語は使わずに説明できるようにしておく。 |
<参考サイト:補助金プラス>
<参考サイト・ものづくり補助金総合サイト>
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
意図 ドローン導入によって働き方が改善し、従業員の労働環境の改善を図る企業に対する助成金です。
対象 中小企業で業種や職種の制限はありません。
ドローンの導入が生産性の向上につながり、労働時間の短縮や業務工程の簡略化などが図れると考えられるなら申請を検討できます。
受給のためには「成果目標」の設定が必須で、具体的に時間外労働の削減や年次有給休暇・特別休暇の促進につながる数字を出さなくてはなりません。
最大補助金額 成果目標達成状況により変化します。(下表を参考にしてください)
申請書類等の提出は、所在地を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。
補助率 原則3/4
- ○成果目標1の上限額
<引用元:厚生省・働き方改革推進支援助成金>
事業実施後に設定する時間外労働時間数等事業実施前の設定時間数 現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月80時間を超えて設定している事業場 現に有効な36協定において、時間外労働時間数等を月60時間を超えて設定している事業場 時間外労働時間数等を月60時間以下に設定した時の補助金 200万円 150万円 時間外労働時間数等を月60時間を超え、月80時間以下に設定した時の補助金 100万円 ○成果目標2達成時の上限額:25万円
○成果目標3達成時の上限額:25万円
<参考サイト:厚生省・働き方改革推進支援助成金>
事業再構築補助金
対象 新型コロナの影響を受け業績が悪化した中小企業の回復に向けたもので、新たな事業や業種の変更、新市場への展開などを思い切って目指すための補助金です。
また大前提として資本金10億円未満の事業者が対象となっています。
条件「売り上げ減少」は要件から外されましたが、「事業再構築に取り組む」「認定支援機関と協力する」という要件を満たさなければ申請できません。
また「補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加等の達成を見込む事業計画を策定する」ことは必須となっています。
補助額 1、500万以下~1.5億円以下(成長枠・グリーン成長枠)
補助率 1/2(成長枠)、3/2(グリーン成長枠中小)
事業再構築補助金は、過去最大級の補助金で、現在最も注目されており、「ドローンを活用し、全く新しいサービスの提供をしたい」などのニーズにマッチします。
ドローンを活用した事業再構築補助金が採択された5つの事例を紹介します。
・農薬散布請負サービス・・・ドローン導入の代表的なビジネスモデル。新たに農業用ドローンを導入し、地元の農業支援とともに業務内容の拡大を図る。 ・スクール事業・・・既存事業がコロナで壊滅的になったため、従業員がインストラクターになって新たにドローンの操縦法を教えるスクールを開校し、既存事業を活かした講習内容で生徒を集め利益を確保する。 ・撮影サービス・・・卒業・入学などの学校行事でドローン記念撮影代行サービスを行って、新しい体験とともに記念に残るものにしたい。 ・点検サービスの提供・・・ドローンに赤外線カメラを搭載して、ガス検知用の点検を行うことで他社と区別化した事業を展開し顧客の新規獲得と収益の増加を目指す。 ・測量サービス・・・大きな工事になるほど人の目が届きにくい危険な場所が生じてくるので、ドローン測量機を使用した正確な測量が可能となり、建設業の生産性と安全性を確保できる。 |
ドローン市場は始まったばかりで、たくさんの可能性を秘めています。
ドローンを活用した事業を検討している方は、この機会に事業再構築補助金を活用し、事業の拡充や開拓を推進していくことをおすすめします。
しかし日本の中小企業の数からすると、補助金を受けられる枠は十分ではないため、熾烈な競争が予想されています。
申請する際には、事業計画書を明確で具体的で分かりやすく、かつ十分な説得力のあるものにして審査が通るようにしましょう。
<参考サイト:事業再構築補助金・ものづくり補助金の申請代行サポート>
<参考サイト:事業再構築補助金>
IT導入補助金
対象 ITツールを導入することで、サービス品質の向上や業務の効率化、生産性の向上、収益の増加を図りたい中小企業事業者向けの補助金です。
ドローンの導入で上記の効果をもたらせると考えられる場合に申請できます。
そして会社が抱える課題をクリアにし、ドローンを導入することで、どのように課題を解決していくのかを明確にしておきましょう。
またITツールとしてのドローンの実用化に向けた取り組みを、具体的に把握しておかなければなりません。
補助金額 5万円~450万円
補助率 1/2~3/4
IT導入補助金で受け取れる金額を以下の表で記します。
<引用サイト:補助金プラス>
補助金申請で注意したいのは、登録済みのIT導入支援事業者でのITツールのみしかできないことです。
ですからIT導入支援事業者が提供するシステムを検討したい場合は、IT導入補助金の活用はおすすめです。
さらに導入に際してIT導入支援事業者からのサポートも受けられますので安心です。
しかしIT導入補助金は、使用用途も限られ上限額が高くないことを考えると、それ以外の場合はものづくり補助金への申請にした方がよいでしょう。
ちなみに、ものづくり補助金との併用はできませんので注意してください。
ただし補助対象となる事業内容(サービス・ソフトウェア等)が重複しない場合は二つを活用できます。
なおIT導入補助金で採択された事業所例としては、下記のドローン事業が挙げられます。
・農林業におけるセンシング、散布等へのドローン活用プロセス、サービス等の構築 ・測量、スキャン、構造物メンテナンスの新手法やサービスの開発 ・ドローン機体、部品、素材の開発 |
<参考サイト:IT導入補助金>
<参考サイト:KDDIスマートドローン>
強い農業づくり総合支援交付金(農業支援サービス事業支援タイプ)
対象 農業支援サービスに新規参入する事業主に向けた補助金です。
具体的には、農業用ドローンの購入・リースなどの費用も含まれ、ドローンスクールが全額補助になったり、ドローン機体一式が半額になったりします。
この場合も「ドローンによる農薬散布代行サービスを行う」といった事業内容で申請できます。
【受給要件】
・新たに農業支援サービス事業を実施すること ・様々な資料作成が必要になるため、事務手続きを適正に行えること |
最大補助金額 1,500万円 補助率 1/2
<参考サイト:農林水産省・強い農業づくり総合支援交付金>
<参考サイト:コエテコドローン>
小規模事業者持続化補助金
対象 従業員数が20人以下の小規模事業者向けで、販路開拓や生産性向上を支援するものです。
事業者自らが経営計画を練り上げ、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組めます。
比較的採択要件がやさしいので、ものづくり補助金は申請事務でハードルが高い場合に使えるでしょう。
補助率 2/3 補助金額 50万~200万円(2023年度ではインボイスに転換した事業者対象で250万円)
ものつくり補助金の対象にならない100万円以下の機体の購入や、ドローンの導入が業務効率アップ・販路拡大につながると見込まれる場合も申請を検討できます。
しかし「販路開拓に向けた取り組みを支援する補助金」のため、「業務効率化」のみでは補助事業として認められませんので注意しましょう。
小規模事業者持続化補助金は、申請にかかる事務作業の負担が軽く採択率も高いことから、身近な補助金としておすすめなポイントです。
<参考元:小規模事業者持続化補助金>
<参考元:小規模事業者持続化補助金を使ってドローン導入!>
ドローン導入時に補助金・助成金を活用する注意ポイント
・実際の支給までの時間が長い ・煩雑な事務処理を厳密に行う ・対象外となる事業期間外の支出 |
実際の支給までの時間が長い
せっかく審査に通過したのに、実際に補助金や助成金が支給されるのは、導入にかかる費用が決定した後になり、それまでに購入したドローンは自費で支払わなくてはなりません。
つまり支給までには時間がかかってしまうのです。
ですからドローン導入のための補助金・助成金を申請する際は、資金を蓄えた上で行う必要があるでしょう。
また実際に補助金が支給されるまで、つなぎ融資を受けるのも方法の一つとなりますね。
煩雑な事務処理を厳密に行う
補助金や助成金の受給要件には、計画書や報告書・収支報告書などの提出が含まれています。
対象期間中に要件どおりの事務処理・会計処理が行われていないと、補助金や助成金が支給されない可能性があります。
お金がからんできますから事務処理も大変ですが、必要経費の半分以上が受給されることがありますので、当然のこととして首尾よくこなしていきましょう。
対象外となる事業期間外の支出
補助金・助成金では、対象期間が厳密に決まっています。
対象期間外の出費は補助金・助成金の対象ではないので注意しましょう。
一般に、補助金・助成金の対象となるのは交付決定通知が発行された後です。
ドローンの購入や関連費用の支払いは、対象期間内に行いましょう。
まとめ
補助金は条件にあえば誰でも支給されますし返済も不要です。
そして高額な産業用ドローンも半額ほどで購入できますから活用しない手はないですね。
ただし要件を満たすために公募をよく確認し、審査に通りやすいように事業計画書などを、分かりやすく明確で説得力のあるものに整えておく必要があります。
産業用ドローンの導入は、時流に乗った取り組みで国の支援も充実してきていますから、この機会に補助金助成金を賢く活用して業務拡張や業績向上につなげていきましょう。